地方で働くって実際どう?先輩職員に聞いてみた。
2021年02月01日
先輩の話

「新卒から地方移住。ぶっちゃけ…どうなの?」

人生で初めての就職先選び。職種・地域・勤務条件…考えることが山ほどあって不安を感じている方も多いのではないでしょうか?今回は新卒で地元を離れて首都圏から地方に移住し、福祉の現場で絶賛活躍中のふたりの若者に、仕事の話や地方での生活についてお聞きしたインタビューをお届けします。
その職場を選んだ理由は?移住のきっかけは?不安や後悔はなかった?実際働いてみてどう?このインタビューでは、そんな多くの学生が抱く疑問や不安を“大阪のお兄ちゃん”なFACE to FUKUSHIの代表・河内が先輩たちから根掘り葉掘り伺いました。

地方で働く先輩たちの“本音”“生の声”から、就職先を決めるヒントやきっかけにしてみてくださいね。

  \この先輩たちに聞いてみた!/

話し手①:清水 敬太(しみず・けいた)

千葉県出身。日本社会事業大学卒。2016年4月に社会福祉法人南高愛隣会に入職後、障害者職業能力開発事業(素麺づくり)、触法障害者の日中支援(B型就労事業所 養鶏作業)や生活支援(グループホーム)などに携わる。現在は長崎定着支援センターにて触法障害者や触法高齢者の仕事探しや住まい探し、フォーマル・インフォーマルな支援につなぎ、再犯せずに地域での暮らしができるように支援を続けている。

話し手②:荻原唯(おぎわら・ゆい)

東京都出身。桜美林大学で精神保健福祉を学び、一般企業の就活をするも、運命のいたずら(?)で2016年4月に社会福祉法人ゆうゆうに入職。生活介護事業所で障害者の生活支援を経験した後、現在は事務局にて中高生向けの福祉教育や新規プロジェクトを担当中。趣味は北海道内日帰り旅行、特技は早歩きと目覚まし時計が鳴る1分前に起きること。

 \この人が聞きました!/

聞き手:河内崇典(かわうち・たかのり)

大阪生まれ、大阪育ち、生粋の大阪人。大学在学中に障害のある男性とそのお母さんとの出会いがきっかけとなり、2001年にNPO法人み・らいずを立ち上げる。誰もが当たり前に地域で暮らせる社会を目標に、障害児、子ども、若者支援の活動を幅広く手がける。一般社団法人FACE to FUKUSHI共同代表、近畿大学非常勤講師。キン肉マンと阪神タイガースをこよなく愛する1児の父。

千葉からはるばる長崎へ。「ここで働きたい!」が移住のきっかけ。

ふたりとも大学まで首都圏に住んでて、FACE to FUKUSHI主催の就職フェア(FUKUSHI meets!)で今の就職先の話を聞いたことをきっかけに、地方(それぞれ長崎・北海道)に移住したんよね。新卒で地元から離れて、自分を知ってる人が誰もいないような土地に行くのはすごく勇気がいると思うけど…生まれ育った場所を離れて働くことに不安はなかったの?

私の場合、今の職場である【南高愛隣会(以下、愛隣会)】で働きたかったことが長崎に就職・移住したきっかけでした。触法障害者(罪を犯した障害者)の支援を長年行っていたのが愛隣会で、学生のうちから「定着支援センターで働きたい!」と思っていたんです。「愛隣会で働きたくて、それがあったのがたまたま長崎だった」というだけで、愛隣会が関東にあれば関東に、他の地方にあればその土地に行っていたと思います。

愛隣会の事業って良い意味で特殊だから、学生さんが新卒で行くには仕事内容も移住もわりとハードルが高いんじゃないかと思って…そこに飛び込んでいった清水さんの勇気がすごい!

元々、愛隣会に興味を持っていて予備知識はあったんですよ。私は大学で福祉の課題を研究するサークルに入っていたのですが、そこで“累犯障害者”という、罪を繰り返してしまう障害者の存在を研究したことがあって、支援に携わってみたいとずっと思っていました。
そして移住したのは、実は勇気がないからこそできたことかもしれません(笑)。私の性格上、一度就職をしたら辞める勇気がなくなって、ずっとそこに居続けてしまうだろうと思ったんです。それなら最初から一番やってみたい仕事をやりたいなって。新卒で何もない状態だからこそ「行くなら今しかない」と思いました。それに、失敗して辞めることになっても、地元に戻ればいいし、帰る場所があるという安心感があったので、むしろ安心してチャレンジすることができました。

▲電話で相談業務中の清水さん。

“帰る場所”があるから一歩踏み出せた

新卒・若いうちだからこそ、フットワークが軽くて良かったのかもね…!荻原さんは、どういう思いで北海道に就職・移住を決意したの?

私は清水さんとは真逆の動機でした。大学では精神保健福祉の勉強をしていましたが、いざ実習に行ったときに多職種連携がうまくいってない現状を見てしまったんですよね。それで福祉業界に行きたいと思えなくて、一般企業の就職活動をしていたんです。そんな中で、先生に勧められて参加したのがFACE to FUKUSHIの就職フェア(FUKUSHI meets!)でした。フェアに行ったのも、正直に言うと参加特典のクオカードが目当てだったくらいです(笑)。そこでたまたま、現職場である【社会福祉法人ゆうゆう(以下ゆうゆう)】のブースで話を聞いて「地域“を”つくる」というビジョンに感銘を受けました。北海道には家族で何度も旅行し、良いイメージを持っていたこともあって、就職を機に北海道に移住しました。

すごい方向転換と決断!クオカードで人生変わってるやん(笑)!東京から北海道…そんなにさらっと決められるものなの?

実は私、ずっと就職したいと思っていた一般企業の採用試験に落ちちゃって、当時はそれが「人生終わった」と思うほど悔しかったです。けどそれがあったおかげで「一から仕切りなおそう!」って気持ちを切り替えることができました。あとは私も清水さんと同じで、「地元を離れて就職するなら新卒の今しかないんじゃないか?」と思い、だからこそあえて地方を選んだのもありますね。今の職場で楽しく働けて好きなことができているので、結果としてすごく良かったです。今いる当別が、私にとっては“帰る場所”にもなっています。

▲中高生向けの福祉教育で講演する荻原さん

この場所だから感じられる人のあたたかさ。この場所にしかない良いところ。プライベートは、「水曜どうでしょう」(笑)

新卒”なのに”じゃなくて新卒“だからこそ” できたことやね。とはいえ、地方への就職を考えている学生さんには、移住にハードルを感じている人も多いんじゃないかな。ズバリ「うちの地方においで」って勧められる?

人それぞれ、合う・合わないってあると思うんですよ。
だからこそ、まずは足を運んで見学したり肌で確かめるのがいいと思います。実際に見ないとよくも悪くも何も分からないですし、あちこち行けるのも学生のうちだからこそ。他の職場に就職してから「やっぱりあっちが良かった」と後悔しても、そこから動くほうがよっぽど大変だし。私は愛隣会のインターンシップに宿泊で参加して、就職後に関わる職員や利用者さん、地域をあらかじめ知ることができたので、生活や仕事のイメージができて安心できました。少しでも興味があったら自分の目で見て、納得できる選択ができるのがいいんじゃないでしょうか?

とはいえ、働いてからの不安や苦労はあったんじゃない?実際見知らぬ土地に移住して働いてみてどう?

頼れる人がいないと辛いかもしれないですね。私の場合は、ひたすら飲み会に行って顔を売って、相談できそうな人を見つけていきました。愛隣会にはプリセプター(指導係)制度があったので、その方にも相談ができます。
それに地方って、地域ならではのあたたかさがあって。法人として定期的に地域の方に集まってもらいご意見を頂いたり、時にはソフトボールを教わったりと、日ごろから支えて頂いています。そこで繋がりができ、ガソリンスタンドへ立ち寄った時には「最近どう?頑張ってる?」なんて声掛けをしてもらったり。仕事をするうえで地域の人に助けられていて、そのおかげで楽しく仕事や生活ができています。

私も北海道に友達がまったくいない状態の移住で、しかも私は運転もできなかったので休みの日にどこにも行けなかったんです。でもゆうゆうは若い先輩も多いから職場同士の交流があって、休みには先輩たちが色んなところに連れて行ってくれました。私がいる地域はお店自体が少ないので、みんな自然と同じ店に集まってきます。そうすると地元の人と顔見知りになってだんだん親しくなってくるんですよね。私の表情の変化に気づいてくれて元気がないときに人生相談に乗ってもらったり、逆に相談されたり…人があたたかいので、地域への愛着が沸いてきますね。

地方には、都会にない良さがあるのかもね…!
自分も思えば昔、一人で島に宿泊したときに宿の方から「一緒に飲みませんか?」って声をかけられて、島酒を振る舞われたことがあったなぁ。一人で泊まりに来て部屋から出てこない男性…思い詰めてる人みたいで心配やったんやろうね(笑)。そういう思いやりや支え合いの日常が、きっと地方にはあるんやろうなと、ふたりの話を聞いて思ったよ。

ジムがないから、体育館に行くとみんな集まってて一緒に運動をしたり。カラオケがつぶれちゃっても、ドライブしながら歌ったり。先輩と車で出かけるときは「水曜どうでしょう」みたいにサイコロを転がして、北海道の各所を巡ったり…。都会ほど環境が整っていないからこそ、人が集まって助け合えるし、工夫しながら生活を楽しんでいる感じがありますね!

二人の話を聞いていると、充実しているのが伝わってくるなぁ。“新卒から地方移住”ってハードルが高いものだと思ってたけど、逆に若いからこそ、失敗してもやり直しやすいし、チャレンジもできる。別の生活やキャリアを積み上げた後にそれを手放すとなると、ものすごい労力や勇気が必要やしね。学生のうちに、興味があるところには実際に足を運んで自分の目で確かめ、自分が納得できる仕事や地域を選ぶ…そういうフットワークの軽さが大切だと、二人から学ばせてもらいました。
後悔のない選択ができるよう、学生の皆さんには多くの職場を知って体験してもらいたいですね!

\この記事を書いたのはこの人!/

町田 舞(まちだ・まい)
新卒でシステムエンジニアとして就職し、うつ病・休職を経験し退職。その後フリーターを経て介護士から看護師となり、フリーランスに転身。現在は看護師としても働く傍ら、医療福祉事業のウェブ・広報業務や、看護メディアでのライター活動、ブログ・SNS発信などパラレルキャリアとして活動中。数多くの失敗や転職経験を“かけ合わせキャリア”に変換した過去から、キャリアに悩む人が適材適所に合わせた道に進めるよう応援している。
Twitter:https://twitter.com/maimai_mirains